5杯に1杯。 2026年6月、この数字がニュースの見出しを飾りました。出どころは、キャンペーン活動を行うNGOの連合、つまりCoffee Watch、Inkota-network、Deutsche Umwelthilfe、Pesticide Action Network UKによる報告書Poison in Your Coffeeです。実際の文言はもっと慎重で、「コーヒーを飲む人が味わう5杯に1杯は、残留農薬に汚染されている可能性が高い」となっています。

フランスのある見出しは、「可能性が高い」にあたる言葉をそっくり落としていました。毎日約22億杯が飲まれていることを思えば、不安になるのはよくわかります。次の疑問が浮かぶのも当然です。オーガニックに切り替えるべきなのでしょうか?

答えは2つに分かれます。カップの中については、これまでの研究では、洗浄、焙煎、抽出によって残留農薬は減っています。ただしゼロが保証されるわけではなく、抽出後の飲み物についてのデータは乏しいのが実情です。これ以上のことを言うには、わかっていることが少なすぎます。

農園については、状況はずっと明確です。最も重い負担を背負っているのは、コーヒーを飲む人ではなく、コーヒーを栽培する2500万人の生産者と1億人の農業労働者です。そうした生産者のなかにはラベルをまったく持たない人もおり、認証の費用が高く、ラベルに手が届かないこともあります。

残留農薬の数字は実際に何を測っているのか?

「5杯に1杯」は、エグゼクティブサマリーに一度だけ登場します。脚注も計算もなく、いくつかのパーセンテージのすぐ上に置かれています。これをそれらの数字に結びつける計算は、公表されたものを探した限り見つかりませんでした。測定値ではなく、ひとつの言い回しとして読んでください。

159の物質:検出された数ではなく、登録された数

ブラジル、ケニア、コロンビアでは、少なくとも159の有効成分について、コーヒーへの使用が登録されています。この3か国が選ばれたのは、データが入手できたからです。この数は査読付きの文献と公式の登録データに基づいています。これらの物質の59%はEUで禁止されています。どちらの数字も、お手元の豆やカップの中身を表すものではありません。

記録された物質の60%はNGOの基準で高有害性農薬(Highly Hazardous Pesticides)に分類され、ケニアの2023年の研究では77%に達しました。159のうち、14はWHOの危険性分類で最も危険な2つの区分に入り、22は発がん性があるかその可能性が高く、29は神経毒性を持ちます。

豆から検出されたもの

警鐘の根拠となっている数字は次のとおりです。

数字調査対象(データまたは公表の年)主な限界
19%で残留農薬を検出生豆80サンプル、2021年単一の分析
21%で残留農薬を検出エジプト市場の焙煎コーヒー、2025年1つの市場のみ、サンプル数の記載なし
23%でEU禁止農薬を検出生豆44サンプル、EUの検査、2022年サンプルが少なく、対象は禁止農薬のみ
72%でグリホサートの分解生成物AMPAを検出45ブランドの焙煎製品57点、米国、2025年対象は1物質のみ。陽性にはオーガニックコーヒーも含まれる
最大79%で複数の残留農薬を検出焙煎サンプル、2024年単一の研究で、しかもその上限値

これらの数字はいずれも、抽出したコーヒーを測ったものではありません。 しかもすべて間接的な情報で、原論文ではなくNGOのまとめを経由しています。グリホサートの結果と、後述する農園の数字の大半も同様です。

23%の根拠は、EU加盟国の公的な検査プログラムにおける44のコーヒーサンプルで、同じプログラムには27,000の野菜サンプルも含まれていました。2024年に、あるNGOがこのデータを分析しました。最大残留基準値(Maximum Residue Limit)と呼ばれる個別の法定上限を超えていたコーヒーサンプルは、わずか2〜3%でした。

それでも、汚染されたサンプルにはいずれも複数の残留農薬が同時に含まれており、EUで禁止された農薬の検出は2011年から2022年の間に10倍に増えています。

焙煎と抽出は、カップから何を取り除くのか?

これまでの研究では、大幅に減少

コーヒーは通常、200〜240°Cで焙煎されます。研究では、洗浄と焙煎によって44%からほぼ100%の減少が報告されています。

エチオピア南西部の豆を使ったある実験室研究では、研究者が12種類の農薬を意図的に添加したうえで、エチオピアの家庭のやり方で豆を処理しました。洗浄で約15〜58%、焙煎で最大99.8%が除去されました。抽出後には、12種類のいずれも検出されませんでした。ただし、これは農薬を添加した豆と伝統的な方法によるもので、市販のコーヒーを調査したものではありません。

中国・雲南省での圃場試験(2015〜2016年)は、本稿では文献レビューを通じて把握しているものですが、ジノテフランという1種類の殺虫剤を追跡しました。230〜240°Cで12〜14分の焙煎により62.2〜100%減少し、抽出では液体中で92.9〜100%減少しました。ただし、散布から1〜56日後のコーヒーかすと洗浄水からは、依然として検出可能でした。

焙煎後も残るもの

熱に弱い農薬は分解するか蒸発します。揮発性が低く熱に安定なものは、とくに豆に結合している場合、残ることがあります。

ネスレとTchiboが委託した研究では、グリホサートの減少率は焙煎条件によって35%から90%までと幅があり、完全に除去できたシナリオはほとんどありませんでした。アラビカはロブスタより減少率が高く、短時間の焙煎は長時間の焙煎を上回りました。

この研究に基づくリスク評価では、1日5杯でもEUの一日摂取許容量を十分に下回るとされました。ただし、対象はグリホサート単独で、混合物は考慮されていません。

クロルピリホスとシペルメトリンは、エチオピアの実験室研究では焙煎後に検出されなくなりました。ところが、エジプト市場の焙煎豆では、最もよく見られる残留農薬に数えられています。これらの研究は同じものを測っていないので、不確かな部分が実際に残ります。

安心できる検査結果、ただし留保つき

1993年のある重要な研究では、生豆60サンプルのうち残留農薬が見つかったのはわずか7%でした。しかし、当時の分析法は感度が低く、分析の際にはカフェインが多くの農薬を覆い隠してしまいます。

フランスのある消費者雑誌も51種類のコーヒーを検査し、いずれからも農薬は検出されませんでした。この検査については、2023年2月に公開された二次情報でしか確認できていません。そこには検査日も、方法も、調べた物質のリストも、オーガニックコーヒーの数も記載されていません。

カップの中はオーガニックのほうがクリーンなのか?比較データがありません

オーガニックコーヒーは、合成の農薬、除草剤、肥料を使わずに栽培されます。しかし、本稿のための調査では、飲み物としてのオーガニックコーヒーと慣行栽培コーヒーの残留農薬を比較した研究や検査は見つかりませんでした。

見つかった唯一の直接比較は葉に関するもので、これも文献レビューを経由した情報です。慣行栽培の木12本とオーガニックの木8本の抽出物で52種類の農薬を調べたところ、オーガニックのサンプルからはどれも検出されず、慣行栽培のサンプル6点からチアメトキサムが検出されました。逆に、AMPAの陽性にはオーガニックコーヒーも含まれていましたが、その割合は示されていません。

これらの証拠からは、飲む人への健康リスクを結論づけることはできず、ゼロを約束することもできません。

農園では、誰が最も農薬にさらされているのか?

散布する人たち

生産者と農業労働者は、調合、散布、処理済みの畑への立ち入り、汚染された水、飛散(ドリフト)を通じて農薬にさらされます。その家族も、衣服、皮膚、水、距離の近さを通じてさらされます。症状はめまいや吐き気から、けいれんや意識喪失まで多岐にわたります。

ブラジルのコーヒーの約半分を生産するミナスジェライス州では、2012年の公式記録に農薬による死亡21件と農業での中毒817件が残っています。同じ地域のコーヒー労働者412人を対象とした調査では、59%が急性中毒の症状を少なくとも1つ経験したと答えました。より広範な推計では、農業労働者の農薬関連疾患の最大88%が記録されていないとされています。

ドミニカ共和国のハラバコア地方では、コーヒー生産者の87%が、マスクも手袋も着けずに散布していると答えました。防護具は手に入らないか高価なことが多く、熱帯の暑さのなかでは現実的でもありません。ブラジルの法律には規定がありますが、2020年の評価では、その執行は依然として十分とはほど遠いようだとされています。

水、土壌、花粉媒介者

ブラジルは2015年、コーヒーに1980万リットルの農薬を使用しました。コーヒー畑には平均10 L/haが使われ、トウモロコシの7.4 L/ha、大豆の4.8 L/haを上回ります。ケニアでは、国内の農薬使用量の推定27%をコーヒーが占めています。

コロンビアでは、コーヒー産地の地表水サンプルの81.3%から農薬が検出され、そのなかにはすでに禁止されているDDTやエンドスルファンも含まれていました。159の成分のうち、46はミツバチに、48は魚に、11はミミズに対して強い毒性を持ちます。

ハチは作物にとって重要で、害虫を食べる鳥も同じです。ある研究では、コーヒーの木から両方を遠ざけると、収量が平均24.7%減少しました。

二重基準

EUで禁止された農薬はいまも生産国に輸出されており、それを使って栽培されたコーヒーは合法的に逆輸入されています。法定上限も異なり、グリホサートの場合、ブラジルは1.0 mg/kgまで認めているのに対し、EUは0.1 mg/kgです。

「結果としてのオーガニック」:ラベルのない生産者とは?

世界のコーヒーの大半を栽培しているのは小規模農家です。その1250万の農園は95%が5ヘクタール未満で、全体で生産量の約80%を担っています。こうした生産者のうち少なくとも550万人は、1日3.20ドルの国際貧困線を下回る暮らしをしています。

研究でわかっていること、わかっていないこと

2009年に学術誌に掲載されたある研究は、ウガンダの大規模なオーガニック認証スキームと、「organic by default(結果としてのオーガニック)」と表現された農業システムを比較しました。スキームへの参加は収入にプラスの効果をもたらし、オーガニックの技術の適用による効果はより控えめでした。要旨に数字はなく、このような状況にある生産者の数を示す情報源はありません。

Coffee Reviewのケネス・デイビッズ(Kenneth Davids)は2011年、小規模農家の暮らす地域全体が「事実上の」オーガニックだと書いています。「彼らは、小さなコーヒー畑に使う化学薬品を買う余裕がないだけなのです」。あるロースターも同様の指摘をしています。どちらの見解も測定値ではありません。

小規模だからといって無農薬とは限らない

小規模農家が防護具なしで散布していることも記録されています。ブラジルでは、家族経営の農家のコーヒーの90%が単一栽培で育てられており、この方式は化学薬品への依存を高めます。そして「結果としてのオーガニック」は、認証を受けたオーガニックではありません。認証も、検査も、ラベルもないのです。

認証に手が届かないことがある理由

認証の費用を数字で示す情報源はありません。2004年のある専門書は、費用と外部機関への依存を理由に、認証をオーガニック生産者にとっての根本的な問題と呼んでいます。同書のメキシコの例では、外国人検査員が自国の水準に合わせた料金を請求し、それは地元の生産者にとって概してきわめて高額です。

地元で検査を行えば、こうした費用は大幅に減らせます。それでも、手間のかかる記帳と、承認された計画のもとでの2〜3年の転換期間は残ります。

ラベルを取得すれば報われるのか?

自動的に報われるわけではありません。オーガニックの価格は、収量が低くなりがちで労力も増える分を補うため、ふつうは高くなります。エチオピア、インド、ニカラグアの小規模農家738人を対象とした調査では、認証を受けた世帯と受けていない世帯をマッチングして比較しました。ニカラグアでは、オーガニックの協同組合が赤いチェリー1 kgあたり1.03米ドルを支払い、認証のない生産者への支払いは0.82米ドルでした。

ところがニカラグアでは、3つの統計的比較のうち2つで、オーガニック認証が収量を下げていました。純収入へのプラス効果はなく、世帯収入への有意な影響もありませんでした。ただし、オーガニック認証のみの世帯は38世帯にすぎません。

世界はどのようにコーヒーを栽培し、何が変わりうるのか?

シェードツリーから直射日光へ

集約型のモデルは、1970年代に最盛期を迎えた緑の革命とともに形づくられました。生産者はシェードツリーを伐採し、工場で製造された農薬と肥料を使うよう促され、「テクニファイド」コーヒー、つまり日なたで育てるコーヒーが広がりました。

日陰がなければ、条件がよいときの潜在的な収量ははるかに高くなります。そうした収量には、より多くの肥料と農薬、そして灌漑も必要です。1980年から2022年の間に、肥料価格指数はアラビカの価格の3.6倍、ロブスタの価格の9.2倍の速さで上昇しました。

代替手段は有効だが、単純な置き換えではない

日陰は実の温度を最大4°C下げ、コーヒーノミキクイムシの個体数の増加率を34%抑えることができます。この虫はチェリーの内部にすむため、殺虫剤で減らせる被害は約30%にとどまり、落ちた実や熟しすぎた実の除去、トラップの設置などを組み合わせる総合的防除の80〜90%には及びません。

ところが2017年、世界のコーヒーの3分の1以上を生産するブラジルでは、一部の地域で近年最悪のコーヒーノミキクイムシの被害が発生しました。同国がこの虫を抑えてきた殺虫剤エンドスルファンを禁止してから、4年後のことです。全収穫量の約40%を占める地域で、生豆への被害は推定5〜30%に達しました。

天候と前年の大豊作も一因でした。ある生産者は、代替手段は高くつくとも述べています。この虫に感染する菌Beauveria bassianaを使う生物的防除は、依然として費用がかかり、効果にもばらつきがあり、小規模農家にとって大きな障壁です。

オーガニック栽培は、無処理を意味するわけでもありません。予防、衛生管理、抵抗性品種、生物的防除に頼り、ピレトリンのような天然の殺虫剤が「ホットスポット」への散布に認められることもあります。

ラベルと検査の弱点

オーガニックコーヒーの栽培面積は2004年以降5倍に増えました。2017年には890,000ヘクタール以上がオーガニックで栽培されていました。これが確認できた最新の数字です。コーヒー全体の半分は認証を受けていますが、キャンペーン活動を行うNGOは、ほとんどのスキームは農薬の抑制にあまり役立っていないと見ています。

コーヒー消費国の多くは、生豆や焙煎豆の残留農薬を体系的に検査しておらず、焙煎コーヒーの法定上限がまったくない法域も少なくありません。

次の一袋で変えられること、変えられないこと

最も役に立つ一歩はシンプルです。オーガニックのラベルは、残留農薬の保証ではなく、農園についての選択として読むことです。オーガニックコーヒーのほうがカップに持ち込む農薬が少ないことを示す比較は見つかっておらず、味が自動的によくなるわけでもありません。もっとも、上質なオーガニックコーヒーは存在します。オーガニックのラベルは、その農園で合成農薬が使われていないことを確かに意味し、最も重い曝露が起きているのはまさにそこです。ただし、生産者の収入の向上を保証するものではありません。

ラベルがすべてを示せるわけでもありません。ラベルのない農園は、買えないから化学薬品を避けているのかもしれませんし、防護なしで散布しているのかもしれません。認証の費用のせいで、小規模な生産者がラベルを取得できないこともあります。

カップについては、これまでの研究では、洗浄、焙煎、抽出で残留農薬は減りますが、ゼロが約束されるわけではありません。飲み物そのものについてのデータは依然として乏しいままです。キャンペーン活動を行うNGOは、輸入されるすべてのコーヒーを生豆も焙煎豆も定期的に検査し、検出された残留農薬をすべて公表するよう求めています。そうしたデータが揃うまで、この問いの答えは出ません。